あひみての のちの心に くらぶれば昔は物を 思はざりけり

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
あひ
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「あひ」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「十六枚札」〈あ〉の仲間です。
現代語訳
やっと逢えて、迎えた夜明け。いま胸にあふれるこの想いにくらべれば、逢う前にあれこれ思い悩んでいた昔など、なにも思っていなかったのと同じでした。恋しさは、かなえば静まるどころか、いっそう深くなるばかり。逢ったあとに、ほんとうの恋が始まってしまった——そんな一首です。
歌人の物語
三十六歌仙のひとりに数えられ、琵琶の名手としても知られた平安中期の貴公子です。若くして世を去ったと伝わり、深まるばかりの想いを詠んだこの一首が、その短い生涯にせつなく残ります。
この歌とは、道のりの「十六枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。