ありま山ありまやま ゐなの笹原ゐなのささはら 風吹けばかぜふけばいでそよ人をいでそよひとを 忘れやはするわすれやはする大弐三位だいにのさんみ

「ありま山 ゐなの笹原 風吹けば」の情景画

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。

決まり字

ありま

決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「ありま」と読んだところで、取る札が決まります。

競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「十六枚札」〈あ〉の仲間です。

現代語訳

有馬山のふもと、猪名の笹原に風が吹くと、笹の葉がそよそよと鳴ります。その「そよ」の音に応えるように——そうですよ、わたしがあなたを忘れたりするものですか。心変わりを疑ってきた相手に、疑うべきはどちらでしょう、と切り返す。しなやかで芯の強い、恋の歌です。

歌人の物語

『源氏物語』を書いた紫式部の娘と伝わります。訪れの絶えていた相手からの恨み言に、この一首で鮮やかにやり返した——その切り返しの見事さに、母ゆずりの才がのぞきます。

この歌とは、道のりの「十六枚札」のあたりで出会います。

うたふだをはじめる

一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。

同じ「十六枚札」の歌