あはれともあはれとも いふべき人はいふべきひとは 思ほえでおもほえで身のいたづらにみのいたづらに なりぬべきかななりぬべきかな謙徳公けんとくこう

「あはれとも いふべき人は 思ほえで」の情景画

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。

決まり字

あはれ

決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「あはれ」と読んだところで、取る札が決まります。

競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「十六枚札」〈あ〉の仲間です。

現代語訳

あはれ——かわいそうに。そう言ってくれそうな人は、ひとりも思い浮かびません。あの人に顧みられないまま、わたしはきっと、このままむなしく死んでいくのでしょう。誰にも憐れまれず、恋に朽ちてゆく身をひとり見つめる——底の深い嘆きの恋の歌です。

歌人の物語

のちに摂政にまで昇りつめた、平安中期の貴族です。華やかな身分でありながら、顧みられずに朽ちてゆく身を詠んでみせる——その振り幅に、歌人としての想像の深さがのぞきます。

この歌とは、道のりの「十六枚札」のあたりで出会います。

うたふだをはじめる

一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。

同じ「十六枚札」の歌