風そよぐ ならの小川の 夕ぐれはみそぎぞ夏の しるしなりける

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
かぜそ
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「かぜそ」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「四枚札」〈はやよか〉の仲間です。
現代語訳
楢の葉をさやさやとそよがせて、ならの小川に夕方の風が渡ってゆきます。その涼しさは、もう秋が来たのかと思うほど。けれど川辺では、夏を送るみそぎが行われていて——ああ、まだ夏だったのだ、と気づかされます。ゆく夏と来る秋の、そのあわいに立つ、涼やかな一首です。
歌人の物語
鎌倉のはじめ、『新古今和歌集』の撰者のひとりをつとめたと伝わる歌人です。移ろう季節のかすかな境目を聞きわけるところに、その研ぎ澄まされた感性がうかがえます。
この歌とは、道のりの「四枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。