春の夜のはるのよの 夢ばかりなるゆめばかりなる 手枕にたまくらにかひなくたたむかひなくたたむ 名こそをしけれなこそをしけれ周防内侍すおうのないし

「春の夜の 夢ばかりなる 手枕に」の情景画

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。

決まり字

はるの

決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「はるの」と読んだところで、取る札が決まります。

競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「四枚札」〈はやよか〉の仲間です。

現代語訳

春の夜の、夢のようにはかない、たわむれの手枕。そんな腕(かいな)をお借りしたばかりに、つまらない浮き名が立ってしまっては——それこそ、惜しいではありませんか。差し出された腕を、しゃれた歌でやんわりと押し返す——春の夜の座興から生まれた、機知の光る恋の歌です。

歌人の物語

宮中に仕えた女房歌人です。眠たげな春の夜、たわむれに御簾の下から差し出された腕に、その場でこの一首を返したと伝わります。当意即妙の機知が、いまも軽やかに響きます。

この歌とは、道のりの「四枚札」のあたりで出会います。

うたふだをはじめる

一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。

同じ「四枚札」の歌