八重むぐらやへむぐら しげれる宿のしげれるやどの さびしきにさびしきに人こそ見えねひとこそみえね 秋は来にけりあきはきにけり恵慶法師えぎょうほうし

「八重むぐら しげれる宿の さびしきに」の情景画

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。

決まり字

やへ

決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「やへ」と読んだところで、取る札が決まります。

競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「四枚札」〈はやよか〉の仲間です。

現代語訳

つる草が幾重にも生い茂った、荒れはてた宿。訪ねてくる人の姿は、もうありません。それでも——秋だけは、忘れずにやって来てくれました。人けの絶えた庭に、しのび寄る季節の気配へ、そっと耳をすます一首です。

歌人の物語

播磨国分寺の講師をつとめた、平安中期の僧と伝わります。この歌は、かつて栄華をきわめた貴族の邸の、荒れた庭で詠まれたと伝わり、移ろいゆくものを見つめるまなざしが、静かににじみます。

この歌とは、道のりの「四枚札」のあたりで出会います。

うたふだをはじめる

一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。

同じ「四枚札」の歌