夜もすがらよもすがら 物思ふころはものおもふころは 明けやらであけやらで閨のひまさへねやのひまさへ つれなかりけりつれなかりけり俊恵法師しゅんえほうし

「夜もすがら 物思ふころは 明けやらで」の情景画

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。

決まり字

よも

決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「よも」と読んだところで、取る札が決まります。

競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「四枚札」〈はやよか〉の仲間です。

現代語訳

ひと晩じゅう、あの人を思って眠れずにいます。それなのに夜は、なかなか明けてくれません。せめて朝の光が差し込めば、と待つうちに、寝室の戸のすきまさえ、つれなく思えてくるのです。つれないのはあの人なのに、恨みは夜にも、すきまにも向かってしまう——眠れぬ夜の、切ない恋のうたです。

歌人の物語

名高い歌人を父に持ち、僧坊に人々を集めて歌の集いをひらいた僧と伝わります。眠れぬ女の心になりかわって詠んだ一首と言われ、そのこまやかな想像力が、静かににじみます。

この歌とは、道のりの「四枚札」のあたりで出会います。

うたふだをはじめる

一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。

同じ「四枚札」の歌