おほけなく うき世の民に おほふかなわがたつ杣に 墨染の袖

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
おほけ
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「おほけ」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「七枚札」〈おわ〉の仲間です。
現代語訳
身のほど知らずなことかもしれません。それでも——このつらい浮き世を生きる人びとに、覆いかけましょう。比叡の山に立つ、わたしのこの墨染の袖を。僧衣の袖をそっとひろげて世をつつむ、大きな祈りのうたです。
歌人の物語
比叡山の頂に立った高僧で、のちに歴史を見つめる書物も著したと伝わります。乱れゆく世のただなかで、人びとの安らぎを祈りつづけた人の、その願いがこの一首に重なります。
この歌とは、道のりの「七枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。