わたの原 こぎいでてみれば 久方の雲ゐにまがふ 沖つ白波

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
わたのはらこ
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「わたのはらこ」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「七枚札」〈おわ〉の仲間です。
現代語訳
大海原へ、舟を漕ぎ出して見わたすと——はるか沖のほうでは、立ちさわぐ白波が、空の雲と見分けもつかずに、ひとつに溶けあっています。海と空の境が、消えてゆく。悲しみも恋も置かず、ただどこまでも広い眺めを詠みあげた、のびやかな一首です。
歌人の物語
摂政・関白をつとめ、のちに出家した平安後期の人と伝わります。書の名手としても知られ、大きな景色をひと息に見わたすこの詠みぶりに、政の頂に立った人の器の広さがにじみます。
この歌とは、道のりの「七枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。