忘らるる 身をば思はず ちかひてし人の命の 惜しくもあるかな

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
わすら
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「わすら」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「七枚札」〈おわ〉の仲間です。
現代語訳
忘れられてゆく、わたしの身のことは、かまいません。ただ——神に「忘れない」と誓ったあなたが、その誓いを破った罰を受けはしないか。あなたの命のほうが、惜しまれてならないのです。捨てられてなお、相手の身を案じてみせる——せつなさの底に、静かな強さののぞく恋の歌です。
歌人の物語
醍醐天皇の中宮に仕えた女房と伝わります。恋の逸話の主人公として物語集にもたびたび登場する人で、忘れられてなお相手を思うこの一首にも、その恋の日々がそっと重なります。
この歌とは、道のりの「七枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。