思ひわび さてもいのちは あるものを憂きにたへぬは 涙なりけり

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
おも
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「おも」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「七枚札」〈おわ〉の仲間です。
現代語訳
つらい恋に思いなやんで、それでも命は、こうして保たれているのに。こらえきれなかったのは、涙のほうでした。命よりも先に、涙があふれてしまう——嘆きの底で、ふとそのことに気づいてしまった、せつない恋の歌です。
歌人の物語
歌の道への思い入れが、ことのほか深かった僧と伝わります。年老いてなお歌の集いに通いつづけたという逸話が残り、そのひたむきさが、こらえきれない涙の一首にも、そっと重なります。
この歌とは、道のりの「七枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。