わたの原 八十島かけて こぎいでぬと人にはつげよ あまのつり舟

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
わたのはらや
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「わたのはらや」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「七枚札」〈おわ〉の仲間です。
現代語訳
見わたすかぎりの大海原へ、数々の島をめざして、いま舟が漕ぎ出してゆきます。そのことを、都に残してきた人に伝えておくれ——岸辺に浮かぶ漁師の釣舟に、そう呼びかけるのです。頼めるのは、名も知らぬ小さな舟だけ。遠ざかる都を振り返る、別れの一首です。
歌人の物語
罪を得て、遠い隠岐の島へ流されるときに詠んだと伝わります。学問にも詩文にもすぐれた人で、のちに許されて都へ戻ったとも伝わり、その波乱が、この船出の景に静かに重なります。
この歌とは、道のりの「七枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。