わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の人こそしらね かわくまもなし

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
わがそ
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「わがそ」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「七枚札」〈おわ〉の仲間です。
現代語訳
潮が引いたときでさえ、海のおもてに姿を見せない、沖の石。わたしの袖は、その石のようなものです。人は誰も知らないけれど——ひそかな恋の涙に濡れて、乾く間もないのですから。誰にも見せない悲しみを、海に沈んだままの石にそっと重ねた恋の歌です。
歌人の物語
二条院に仕えた女房歌人です。この一首によって「沖の石の讃岐」と呼ばれたと伝わり、隠したはずの涙の歌が、そのままこの人の名になりました。
この歌とは、道のりの「七枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。