いにしへの 奈良の都の 八重桜けふ九重に 匂ひぬるかな

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
いに
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「いに」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「三枚札」〈いちひき〉の仲間です。
現代語訳
いにしえの奈良の都に咲いていたという、八重桜。その花が今日、九重の宮中で、ひときわ美しく咲き匂っています。「いにしへ」と「けふ」、「八重」と「九重」——遠い昔の花と、目の前の花が、言葉のなかでひとつに重なります。献上された桜を前に、その場で詠まれたと伝わる、晴れやかな春の一首です。
歌人の物語
宮中に仕えた女房で、歌の名家に生まれた人です。献上された八重桜を受け取る大役を先輩の紫式部から譲られ、その場でこの歌を詠みあげて、居あわせた人々を感嘆させたと伝わります。
この歌とは、道のりの「三枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。