君がため 惜しからざりし いのちさへ長くもがなと 思ひけるかな

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
きみがためを
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「きみがためを」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「三枚札」〈いちひき〉の仲間です。
現代語訳
あなたに逢うためなら、捨てても惜しくない——そう思っていた、この命さえ。けれど、こうして本当に逢えた今は、いつまでも長くあってほしいと、願うようになりました。逢えたことで、命の重さまで変わってしまう。恋の喜びがまっすぐ胸に届く、逢瀬のあとの恋の歌です。
歌人の物語
心ばえの美しさで知られながら、若くして世を去ったと伝わる歌人です。命よ長くあれと願ったこの一首が、短かったその生涯に、切なく重なります。
この歌とは、道のりの「三枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。