ちぎりおきし させもが露を いのちにてあはれ今年の 秋もいぬめり

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
ちぎりお
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「ちぎりお」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「三枚札」〈いちひき〉の仲間です。
現代語訳
「頼りにしていてよい」——そう約束してくださった、恵みのことば。させも草に置く露のようなその一言を、いのちの綱として、待ちつづけてきました。けれど願いは今年もかなえられず、ああ、この秋もまた、むなしく過ぎてゆくようです。はかない約束を頼りに待った歳月の、ため息のような一首です。
歌人の物語
平安の終わりごろの、学識で知られた歌人です。僧であったわが子の晴れの役を願い、たのもしい約束をもらいながら、その秋も果たされず、この一首を送ったと伝わります。
この歌とは、道のりの「三枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。