久方のひさかたの 光のどけきひかりのどけき 春の日にはるのひにしづ心なくしづごころなく 花の散るらむはなのちるらむ紀友則きのとものり

「久方の 光のどけき 春の日に」の情景画

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。

決まり字

ひさ

決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「ひさ」と読んだところで、取る札が決まります。

競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「三枚札」〈いちひき〉の仲間です。

現代語訳

空からやわらかな日ざしがふりそそぐ、のどかな春の日。それなのに桜の花だけは、落ち着いた心もなく、あわただしく散ってゆきます。とどまる光と散りいそぐ花びらに、どうしてそんなに急ぐの、と問いかけながら、舞い散る花から目を離せずにいます。散る花を惜しむ、春の一首です。

歌人の物語

『古今和歌集』の撰者のひとりに選ばれながら、その完成を見ずに世を去ったと伝わる歌人です。のどかさと散りいそぎをひとつの景に重ねるまなざしに、この人の澄んだ感性がにじみます。

この歌とは、道のりの「三枚札」のあたりで出会います。

うたふだをはじめる

一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。

同じ「三枚札」の歌