きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに衣かたしき ひとりかも寝む

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
きり
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「きり」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「三枚札」〈いちひき〉の仲間です。
現代語訳
きりぎりす——いまで言う、こおろぎが鳴く、霜の降りる寒い夜。むしろの上に、自分の衣の袖だけを敷いて、今夜もまた、ひとりで眠るのでしょうか。ふたりなら、たがいの衣を敷きかわして眠るものなのに。虫の音と霜の冷たさのなかの、ひとり寝のさびしさが、しんしんと身にしみるうたです。
歌人の物語
摂政・太政大臣までつとめた、鎌倉のはじめを生きた公卿です。歌にも書にもすぐれ、新古今和歌集の序文を書いたと伝わります。高い位をきわめた人が詠む、ひとり寝のさびしさ——その取り合わせが、静かな余韻を残します。
この歌とは、道のりの「三枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。