今こむと いひしばかりに 長月の有明の月を まちいでつるかな

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
いまこ
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「いまこ」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「三枚札」〈いちひき〉の仲間です。
現代語訳
「今すぐ行きます」——あなたがそう言ったばかりに、九月の長い夜を、ずっと待ちつづけました。けれど訪れたのは、あの人ではなく、夜明けの空にかかる有明の月。待って、待って、とうとう月を待ち出してしまった。長い夜の果ての、しずかなため息のような恋の歌です。
歌人の物語
出家した歌人で、三十六歌仙のひとりに数えられる人です。僧の身でありながら、来ない人を待ちつづける側の心になりかわって詠んだと伝わり、そのしなやかな想像力に、歌の腕がにじみます。
この歌とは、道のりの「三枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。