いまはただ 思ひ絶えなむ とばかりを人づてならで 言ふよしもがな

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
いまは
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「いまは」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「三枚札」〈いちひき〉の仲間です。
現代語訳
今はもう、この恋をあきらめるしかない。ただ、その「あきらめます」というひと言だけは、人づてではなく、じかにあなたに伝えたい——そう思っても、逢って言えるのは、もう別れの言葉だけです。それでも、その一言のためだけに逢いたいと願う、引き裂かれた恋の切ないねがいのうたです。
歌人の物語
平安の中ごろの貴公子です。皇女との許されぬ恋が発覚し、仲を引き裂かれたときの歌と伝わります。もう逢えない人へ、最後のひと言だけでも——その痛切さが、千年を越えて響きます。
この歌とは、道のりの「三枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。