こぬ人を まつほの浦の 夕なぎに焼くやもしほの 身もこがれつつ

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
こぬ
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「こぬ」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「六枚札」〈たこ〉の仲間です。
現代語訳
松帆の浦の、風のやんだ夕なぎどきに、浜では藻塩を焼く煙が、ゆらゆらと立ちのぼっています。いくら待っても、あの人は来ない。それでも待ちつづけるこの身は、あの藻塩のように、じりじりと焦がれるばかりです。静まりかえった夕暮れの浜に、想いの火だけが燃えている——待つ人の、切ない恋の歌です。
歌人の物語
この百人一首そのものを選んだ人と伝わる、新古今の時代を代表する歌人です。百首を選んだ本人が自らの一首に置いたのが、この待ちこがれる恋だった——そこに、その美意識がのぞきます。
この歌とは、道のりの「六枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。