立ちわかれたちわかれ いなばの山のいなばのやまの 峰に生ふるみねにおふるまつとし聞かばまつとしきかば いまかへりこむいまかへりこむ中納言行平ちゅうなごんゆきひら

「立ちわかれ いなばの山の 峰に生ふる」の情景画

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。

決まり字

たち

決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「たち」と読んだところで、取る札が決まります。

競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「六枚札」〈たこ〉の仲間です。

現代語訳

都に残る人々と立ち別れて、これから因幡の国へ下ってゆきます。因幡の山の峰に生えている、松。その名のとおり、待っていると聞いたなら、すぐにでも帰ってきましょう。別れの言葉のなかに、再会の約束をそっと結びこんだ、旅立ちのうたです。

歌人の物語

在原業平の兄で、因幡権守として都を離れた平安前期の貴族です。名高い弟とはまた違う、都に残す人々への細やかな心づかいを、「松」の一語に込めました。

この歌とは、道のりの「六枚札」のあたりで出会います。

うたふだをはじめる

一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。

同じ「六枚札」の歌