恋すてふこひすてふ 我が名はまだきわがなはまだき 立ちにけりたちにけり人しれずこそひとしれずこそ 思ひそめしかおもひそめしか壬生忠見みぶのただみ

「恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり」の情景画

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。

決まり字

こひ

決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「こひ」と読んだところで、取る札が決まります。

競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「六枚札」〈たこ〉の仲間です。

現代語訳

「あの人は恋をしている」——そんなわたしの噂が、もう世間に立ってしまいました。誰にも知られないように、心のなかで、ひそかに想いはじめたばかりだったのに。秘めていたはずの恋なのに、噂だけが、ひとり歩きをはじめてしまいました。そのとまどいと、ほのかな甘さのまじる恋の歌です。

歌人の物語

三十六歌仙のひとりに数えられる平安中期の歌人です。名高い歌合で、この一首が「忍ぶれど」の歌と競いあったという逸話が伝わります。

この歌とは、道のりの「六枚札」のあたりで出会います。

うたふだをはじめる

一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。

同じ「六枚札」の歌