このたびは ぬさもとりあへず 手向山もみぢのにしき 神のまにまに

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
この
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「この」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「六枚札」〈たこ〉の仲間です。
現代語訳
このたびは、あわただしくて、神に捧げる幣も用意できませんでした。けれど、手向山をご覧ください——山いちめんの紅葉が、錦のように輝いています。どうかこの錦を、御心のままにお受け取りください。とっさの機転で、山の秋そのものを捧げものに変えてしまった、あざやかな一首です。
歌人の物語
学問の神として、いまも各地に祀られる人です。上皇の旅にお供した折の歌と伝わり、のちに都を追われた生涯を思うと、神に委ねるこの言葉が、静かに響きます。
この歌とは、道のりの「六枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。