心にも あらでうき世に ながらへば恋しかるべき 夜半の月かな

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
こころに
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「こころに」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「六枚札」〈たこ〉の仲間です。
現代語訳
本意ではないまま、このつらい世を生きながらえたなら——きっと恋しく思い出すのでしょう。今夜、こうして見上げている、夜半の月を。まだ目の前にあるのに、もう思い出のように月を眺めている。別れを前にした夜の、しずかな名残のうたです。
歌人の物語
病に悩まされ、位を退くことを迫られた天皇と伝わります。退位を前にした夜に詠まれたとされ、月を見上げるこの名残が、その境遇に静かに重なります。
この歌とは、道のりの「六枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。