うらみわび ほさぬ袖だに あるものを恋にくちなむ 名こそをしけれ

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
うら
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「うら」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「二枚札」〈うつしもゆ〉の仲間です。
現代語訳
恨みつづけて、涙を乾かすひまもない袖でさえ、朽ちてゆくのに。それよりも——このかなわぬ恋のせいで立つ浮き名に、わたしの評判までが朽ちてしまうことが、なにより惜しいのです。悲しみの底にありながら、なお、おのれの名を惜しむ。誇りとせつなさが、ひとつに溶けあった恋の歌です。
歌人の物語
女房三十六歌仙のひとりに数えられ、恋の歌に長けた人と伝わります。嘆きに沈みきらず、名を惜しむ矜持がのぞくところに、その気丈さが、そっとにじみます。
この歌とは、道のりの「二枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。