もろともにもろともに あはれと思へあはれとおもへ 山桜やまざくら花よりほかにはなよりほかに 知る人もなししるひともなし前大僧正行尊さきのだいそうじょうぎょうそん

「もろともに あはれと思へ 山桜」の情景画

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。

決まり字

もろ

決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「もろ」と読んだところで、取る札が決まります。

競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「二枚札」〈うつしもゆ〉の仲間です。

現代語訳

深い山で、思いがけず出会った桜よ。どうか、おまえもわたしを、いとおしいと思っておくれ。こんな山の奥では、おまえのほかに、わたしの心を分かってくれる人など、誰もいないのだから。人けのない山中で、一本の花に語りかける——孤独とやさしさの、しずかなうたです。

歌人の物語

山にこもって厳しい修行を積んだ僧と伝わります。人里を離れた日々のなかで、花を友と呼びかけるまなざしに、ひとり山に生きた人のさびしさが、そっと重なります。

この歌とは、道のりの「二枚札」のあたりで出会います。

うたふだをはじめる

一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。

同じ「二枚札」の歌