難波江の 蘆のかりねの ひとよゆゑみをつくしてや 恋ひわたるべき

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
なにはえ
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「なにはえ」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「八枚札」〈な〉の仲間です。
現代語訳
難波江に茂る蘆の、刈り根のひと節のような——短い仮寝の、たったひと夜。そのひと夜のために、わたしはこの先、難波の海に立つ澪標(みおつくし)のように、身を尽くして恋いつづけることになるのでしょうか。短い逢瀬が、かえって想いを深くしてしまう。蘆の揺れる入り江の、せつない恋の歌です。
歌人の物語
崇徳院の后、皇嘉門院に仕えた女房と伝わります。この一首は歌合で「旅の宿の恋」というお題に応えて詠まれたといわれ、ひと夜の恋にここまで心を寄せる、その想像の深さが光ります。
この歌とは、道のりの「八枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。