夏の夜はなつのよは まだ宵ながらまだよひながら あけぬるをあけぬるを雲のいづこにくものいづこに 月やどるらむつきやどるらむ清原深養父きよはらのふかやぶ

「夏の夜は まだ宵ながら あけぬるを」の情景画

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。

決まり字

なつ

決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「なつ」と読んだところで、取る札が決まります。

競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「八枚札」〈な〉の仲間です。

現代語訳

夏の夜は短くて、まだ宵のうちだと思っているまに、もう明けてしまいました。西の山まで帰りつくひまもなかったはずの月は、いまごろ雲のどのあたりに、宿をとっているのでしょう。白みはじめた空を見あげて、月の泊まり先をふと思いやる——あっけなく明けた夜を、軽やかな問いかけで惜しむ、夏のうたです。

歌人の物語

平安前期の歌人で、清少納言の曽祖父にあたる人と伝わります。月に宿を思いやる、このやわらかな機知のひらめきが、のちの子孫にもつながる家の芸のように、ほのかに香ります。

この歌とは、道のりの「八枚札」のあたりで出会います。

うたふだをはじめる

一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。

同じ「八枚札」の歌