ながらへば またこのごろや しのばれむ憂しと見し世ぞ 今は恋しき

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
ながら
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「ながら」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「八枚札」〈な〉の仲間です。
現代語訳
このまま生きながらえたなら、つらいと思っている今のこの頃さえ、いつか懐かしく思い出すのでしょうか。かつて憂きものと見ていた昔の日々が、今はこんなにも恋しいのだから。過ぎてみれば、つらさも愛おしさに変わる——時のふしぎを見つめる、しずかなうたです。
歌人の物語
平安の末に、歌の学問の道を深めた人と伝わります。思うにまかせぬ日々を長く過ごしたとも伝わり、つらい今をいつか恋しむというまなざしが、その来し方に静かに重なります。
この歌とは、道のりの「八枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。