なげけとてなげけとて 月やは物をつきやはものを 思はするおもはするかこち顔なるかこちがほなる わが涙かなわがなみだかな西行法師さいぎょうほうし

「なげけとて 月やは物を 思はする」の情景画

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。

決まり字

なげけ

決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「なげけ」と読んだところで、取る札が決まります。

競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「八枚札」〈な〉の仲間です。

現代語訳

月が「嘆け」とでも言うように、わたしに物思いをさせているのでしょうか。いいえ、月のせいであるはずもないのに——見上げれば、まるで月をとがめるような顔をして、涙がこぼれてくるのです。ほんとうの理由は、口にできない恋。かなわぬ想いを、月に預けた恋のうたです。

歌人の物語

武士の身分を捨てて出家し、花と月を愛でながら各地を旅した歌人と伝わります。月を見上げて涙するこの姿に、生涯月を詠みつづけた人の面影が、静かに重なります。

この歌とは、道のりの「八枚札」のあたりで出会います。

うたふだをはじめる

一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。

同じ「八枚札」の歌