名にし負はば 逢坂山の さねかづら人にしられで 来るよしもがな

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
なにし
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「なにし」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「八枚札」〈な〉の仲間です。
現代語訳
「逢う」という名を負った逢坂山には、「さね(共寝)」の名をもつ蔓草、さねかづらが生えています。その名がまことであるなら——蔓をそっとたぐり寄せるように、誰にも知られず、あなたのもとへゆく方法があればいいのに。地名と草の名のなかに想いをしのばせた、ひそやかな恋の歌です。
歌人の物語
平安の御世に右大臣をつとめ、屋敷が三条にあったことからこの名で呼ばれたと伝わります。歌人たちを厚く遇した人ともいわれ、言葉あそびの奥に、雅びなたしなみがにじみます。
この歌とは、道のりの「八枚札」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。