村雨の 露もまだひぬ まきの葉に霧たちのぼる 秋の夕ぐれ

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
む
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「む」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「一字決まり」〈むすめふさほせ〉の仲間です。
現代語訳
通り雨がすっと上がって、槇の葉にはまだ雨の露が光っている。そのあたりから、白い霧がゆっくりと立ちのぼってゆきます。秋の、夕暮れ。さびしいともかなしいとも言わないのに——しんと静まったその景色そのものが、もう胸を打ちます。
歌人の物語
出家して各地を旅した歌人です。心の言葉をひとつも置かず、景色だけで気配を描く——その余白が、この時代の美しさでした。
うたふだの道のりは、この歌から始まります。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。