さびしさに 宿を立ち出でて ながむればいづくもおなじ 秋の夕ぐれ

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
さ
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「さ」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「一字決まり」〈むすめふさほせ〉の仲間です。
現代語訳
あまりのさびしさに、宿を出て、あたりを眺めてみました。けれど、どちらを向いても同じ——暮れてゆく空のしたに、ただ秋の夕暮れのさびしさが、しずかに広がっているばかりでした。逃れたくて出てきたのに、ゆける先はどこにもありません。それでも、その夕暮れから、目を離せずにいるのです。
歌人の物語
俗世を離れ、ひとり静かに暮らした僧と伝わります。逃れようとしても、さびしさはどこへ行っても同じ——そのあきらめにも似た静けさが、世を捨てて生きた人の日々に、そっと重なります。
この歌とは、道のりの「一字決まり」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。