吹くからに 秋の草木の しをるればむべ山風を 嵐といふらむ

読みを聞いてみましょう。上の句のあとに、下の句が続きます。
決まり字
ふ
決まり字は、その一首だと聞き分けられるようになる、上の句のはじめの何文字かのことです。この歌なら、読み手が「ふ」と読んだところで、取る札が決まります。
競技かるたでは、同じ音ではじまる札が何枚あるかで分類します。この歌は「一字決まり」〈むすめふさほせ〉の仲間です。
現代語訳
山から風が吹きおりると、たちまち秋の草も木も、うなだれるようにしおれてしまいます。なるほど、だから「山」と「風」を重ねたあの字を、「嵐」——荒らすもの——と呼ぶのですね。景色を見つめるうちに、ひと文字のなかにまで秋風が吹いていたことに、ふと気づかされます。機知のきらめく、秋の一首です。
歌人の物語
詠んだのは、六歌仙のひとりに数えられた歌人です。言葉の巧みさで知られた人で、嘆きではなく文字の仕掛けにそっと目をとめる——その軽やかさが、この一首にも息づいています。
この歌とは、道のりの「一字決まり」のあたりで出会います。
うたふだをはじめる
一首ずつ歌と出会いながら、決まり字を手がかりに札を取る力を、短いお稽古で育てていきます。